普段は千葉の田舎に住んでいる。ボランティアでちょこちょこ演奏会に関わっていたが、それ以外ではもう2年くらいはまともに演奏会に行っていないだろうか。そろそろ何かナマで聴きたいと思っていたところ、コープマンの来日を知った。「これは聴きたい!」と意気込んで、遠出して所沢市民文化センターミューズアークホールに行ってみたわけである。とても暑い6月26日(日)の午後のことだった。
まずこの日のプログラムから
・ブクステフーデ:トッカータヘ長調 BuxWV157
・ブクステフーデ:『わが魂よ、いまこそ主を讃えよ』BuxWV214/215/213
・ブクステフーデ:前奏曲ニ長調BuxWV139
・スウェーリンク:大公の舞踏曲SwWV319/エコー・ファンタジーイ短調SwWV275
・ダカン:『イエスがクリスマスにお生れになったとき』
・J.S.バッハ:『装いせよ、おお、魂よ』BWV654
・J.S.バッハ:『目覚めよ、と呼ぶ声あり』BWV645
・J.S.バッハ:幻想曲ト長調BWV572
・J.S.バッハ:小フーガト短調BWV578
・J.S.バッハ:『天にいます、われらの父よ』BWV682
・ホミリウス:『われらが神よ、われ心を汝に捧げん』
・J.S.バッハ:バッサカリアBWV582
アンコール
・J.S.バッハ:『主イエスよ、われは汝に呼ばれる』
・カパニエルス:第二旋法によるティエント
・スカルラッティ:ソナタト長調
設計・製作:リーガー社(オーストリア)
設置:1993年11月
整音:O.ワーグナー
初めて見るコープマンはとても可愛い。二階席後方から正面のバルコニーを行ったり来たりする彼はまるでひげを生やした少年である。お辞儀の仕方もいちいち可愛い。私がとても感銘を受けたのは演奏前にお辞儀してから椅子に座り、オルガンを弾き始めるまでの速さ・短さである。息を整えるとか精神を統一させるとかいう素振りがまったくない。遠くから見ていたので細かく見えかっただけかもしれないが、それでも自然体で流れるように勢いよく弾き出すのである。これを見に行くだけでも行った価値があるというものだ。
さて、その演奏であるがこれはもうコープマン節炸裂である。70歳を越えているというが、とにかくよく動き、前のめりのテンポが爽快。最初のブクステフーデは正確に弾けているのかどうかよくわからないし、随分ごちゃごちゃしていて輪郭が掴みづらいのだが、でも凄いと感じるものがあり、これがリューベックの巨匠の醍醐味だといった弾きっぷりであった。そういった意味ではバッハの小フーガも一緒なのだが、こちらは有名な曲なので旋律に耳がついていける。それでも自己ベストを狙う短距離選手のようにべらぼうな勢いのため少々混乱するが、それが楽しいのである。オルガンというと伝統的で重厚な風格のある楽器というイメージが先行するが、コープマンのオルガン演奏はとてもカジュアル。本当に生き生きしている。楽しみにしていたパッサカリアはやっぱり素晴らしかった。即興的な側面はそのままに、巨大な壁画ができていくようで壮麗だった。所沢のオルガンも明るくぬくもりがあって美しかった。
この日はホール近くのレストランで所沢ビールとソーセージを注文し飲んでから田舎へ帰った。最高に暑く、最高に旨い一日だった。
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