近しい知人はホルン吹きでいろいろと私に教えてくれる。
「アレキは日本人好きだよね、60歳代の人とか特に吹いてる人多いよ。」
アレキ=アレキサンダー
まるでエレキみたいに言うものだから、こちらは戸惑うのだが、アレキサンダーとはドイツ・マインツにあるホルンメーカーの老舗らしい。
ところで、知人のホルンには光沢が全くない。なんでこんなにアンティークなのだろう?
「ノーラッカーの103ってやつね」
なるほど、艶出しの塗料を塗っていないのか。私はピカピカの金管楽器しか知らなかったから、アンティークな仕上がりが知人の不始末でそうなったのではないかと勘ぐっていたのだが、それを反省した。
「毎日拭かないと錆びちゃうんだよね。日本のなんだっけ・・・手拭い!手拭いで拭くのがいいんだよね」
よく見るとホルンはところどころ錆びているように見える。
「一年くらい放置してたからね」
やっぱりそういうことだったのか。楽器はいつだってメンテナンスが必要だということか。
知人はそのホルンで音階を吹き始めた。近所迷惑にならないようにベルは外している。ベルのないホルン。それだけでどこかおかしいのだが、響きは確かに私の知るホルンの素朴な味わいがあった。
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